直せなくなる原因は理由が残っていないこと
半年後にAIでつくったアプリへ項目を1つ足そうとして作業が進まなくなることがあります。どこを触ればよいのか、なぜこの形になっているのかがわからないためです。
AIに書かせたコードが保守しにくくなる原因には判断が会話の中にしか残らないこと・変更を読まずに進めること・構造が毎回ばらつくことの3つがあります。コードそのものはあとからでも読み返せます。失われやすいのは「なぜそう決めたか」のほうです。
決めた理由が書き残されていない状態は「意図の負債」と呼ばれます。意図を与えられるのは人だけで、AIは知らない理由をもっともらしくつくってしまいます。
決めた理由とやめた案を書き残す
直せる状態を保つためにまず決めたことを短く書き残します。機能を1つ足すたびに採用した理由とほかの案を見送った理由を数行で書きます。あとで最も役に立つのはやめた案とその理由です。
すべてを書く必要はありません。間違えると影響の大きい理由だけは必ず残します。理由はAIとの会話の履歴に残すだけで済ませず、アプリと一緒に保管する文書に書きます。
AIは多くの場合前の会話の前提を持たずに作業を始めます。書いていない理由は直すたびに人が説明し直すことになり、説明が漏れればAIが別の理由を補ってしまいます。文書に書いておけば次に直すときもAIにその文書を読ませて同じ前提から作業を始められます。
変更のたびにAIに説明させて確かめる
2つ目の工夫は担当者がアプリの中身を理解し続けることです。そのために変更内容の説明をAIにつくらせます。説明はまず変更前に何があったかという背景から始め、目的を述べてから細部に進む順にします。説明の最後に変更についての問いをいくつか付け、答えられるまでは他の人にコードを渡さないと決めておく方法もあります。
変更を受け入れる前に「何を変えたか・なぜ変えたか・どこに影響するか」を業務の言葉でAIに説明させます。担当者はその説明を自分の言葉で言い直せるかを確かめます。言い直せないときはその変更をまだ受け入れません。アプリを直し続けるには中身を理解したうえで次の手を考えられる人が社内にいる必要があります。
人が必ず見る変更を決めておく
すべての変更を細かく確認しているとAIで早くつくれる利点がなくなります。そこで人が必ず確認する変更を先に決めておきます。人の確認は影響の大きい変更に絞ります。
業務のアプリではログインと権限・保存するデータの形・ほかのシステムとのつながりが候補になります。これらに触れる変更だけは担当者が説明を読み、納得してから反映します。
直し続けられる状態を一緒に整える
決めた理由の文書と人が確認する範囲の2つがそろっていれば、担当者が代わってもアプリを直し続けられます。
NSYにご相談いただく場合も今あるアプリの中身を確認して決めごととその理由を書き出すところから始めます。そのうえで人が確認する変更の範囲を御社と一緒に決め、使い始めたあともアプリを直し続けられる形に整えます。



