「今と同じに」では仕様にならない
長く使ってきた業務システムをAIの力を借りてつくり直したい。そう考えたときに気になるのは新しいシステムの動きが元と違ってしまわないかです。
よくある進め方は古いシステムをAIに見せて「今と同じように」と頼む方法です。ところが古い仕組みの中には今も使っている機能ともう使っていない機能が混ざっています。AIには今も使っている機能かどうかを見分けられません。
たとえば旧システムを踏襲するという一言だけで仕様を渡すと必要な機能が抜けることがあります。反対に実務で使っていない計算までAIがテスト付きで実装したり、税の計算に公的な表と違う独自の近似式を入れたりすることもあります。何を引き継ぐかを人が言葉にして渡さないかぎりAIには判断できません。
元の機能を一覧にして移す対象を決める
ずれを防ぐにはまず元の動きを仕様として書き出します。画面や帳票ごとに機能を洗い出して番号を振り、それぞれを「そのまま移す」「変えて移す」「やめる」のどれにするか決めます。「やめる」機能もこの段階で決めておきます。使っていない機能まで移すと確かめる範囲が広がり、あとから直す手間も増えます。NSYではこの棚卸しをつくり直しに入る前に済ませるようにしています。
一覧があればどこまで移せたかを1行ずつ確かめられます。つくり直しが終わったかどうかもこの一覧で判断します。
金額や税の計算のように誤りが許されない部分は根拠になる規程や公的な表もあわせて書き出します。社内の決まりごとは1か所にまとめ、誰がどんな理由で決めたかも残しておきます。担当者にとって当たり前のことほど書き漏れやすくなります。
新旧を突き合わせて差分だけを人が確認する
書き出した仕様だけでは細かな違いまで確かめきれません。そこで同じ条件で新旧の両方を動かし、出てきた画面や帳票を並べて比べます。画面の見た目に加えて計算の結果や帳票に出る数字も比べます。比べる作業は機械に任せ、差が出た箇所だけを人が確かめます。
NSYでも自社サイトを新しい仕組みへ移したとき移す前と後のページの中身が一致するかを機械で比べました。差が出たときはでき上がったページを手で直さず、移す手順のほうを直してやり直しました。
差が正しいかは業務を知る人が決める
比べて見つかった差が直すべきずれなのか、意図した変更なのかは機械には決められません。ずれへの対処は「見つける」「防ぐ」「正す」に分けられ、後ろのものほど人が受け持つ必要があります。差を見て判断するのはその業務を毎日回している担当者です。誰が判断するかは着手前に決めておきます。判断した内容は一覧の該当する行に書き足します。そうしておけば同じ差で二度迷わずに済みます。
NSYにご相談いただく場合もまず今のシステムの機能を一緒に洗い出し、移す・変える・やめるの一覧をつくるところから始めます。比べ方と差を判断する担当者を決めてから、つくり直しに進みます。



