一斉切り替えが怖いのは戻れないから
月曜の朝から全員が新しいアプリに移り、元のやり方はその日で終わりにする。こうした切り替えでは不具合が出たときに業務がまるごと止まります。直るまで待つか慌てて元に戻すかしか選べません。怖いのは新しいアプリそのものより、全員を一度に移して後戻りできない段取りのほうです。
開発の現場では切り替えの作業を2つに分けて考えます。1つは「デプロイ」です。新しいアプリを本番の環境に置き、いつでも動かせる状態にする技術の作業を指します。もう1つは「リリース」です。置いたアプリを実際に使い始めてもらう業務の判断を指します。多くの現場ではデプロイとリリースを同じ日にまとめて行うため、切り替えに失敗したときの影響が大きくなります。
公開する日と使い始める日を分ける
置く日と使い始める日を分けると技術の準備が整った日に公開日を合わせる必要がなくなります。新しいアプリは先に本番へ置いておき、誰に使ってもらうかを設定で切り替えられるようにします。公開する日は業務の都合に合わせて決められます。
置く日と使い始める日を分けるには前提が2つあります。1つはアプリを置く作業を毎回同じ手順で安全に繰り返せることです。もう1つは切り替えた後のエラーや使われ方を確認できることです。確認できなければ次へ進んでよいかを判断できません。新旧のアプリが同じデータを使う場合はどちらからも読める形を保ちながらデータの形を少しずつ変えます。
使う人を少しずつ広げる
最初は一部の人にだけ使ってもらいます。例えば1つの部署や慣れた担当者数人です。問題がなければ対象を広げ、エラーが増えたら広げるのを止めます。
対象を広げる条件は広げる前に決めておきます。入力を最後まで終えられた割合のように見る数字を先に決め、元のやり方での数字と比べます。後から都合のよい数字を探すと判断の基準が変わってしまいます。
いつでも元に戻せるようにしておく
不具合が出たらすぐ元の画面に戻せるように切り替えの設定を残しておきます。切り替えの設定があればアプリを置き直さずに元へ戻せます。すぐに戻せるとわかっていれば業務が止まる怖さも小さくなります。
一部の人に先に使ってもらうために設けた切り替えは全員が使い始めた後に外す時期も決めておきます。切り替えを残したままだとアプリの中の処理の分かれ道が増え、後から直すときに確かめる範囲も広がります。緊急時に機能を止めるための切り替えは外さずに残すものとして区別します。
価値はつくった後の運用で積み上がる
少しずつ広げる段取りは遠回りに見えるかもしれません。それでもNSYでは段階的に切り替える手間こそが業務アプリの価値を生むと考えています。つくる速さが上がるほど運用の負担はかえって重くなるからです。他社と差がつくポイントも、つくった量から積み上げた運用の厚みへ移っています。
AIを使えばアプリは早くつくれます。ただ現場で使い続けられるかどうかはどう切り替えてどう見守りどう戻すかで決まります。使い続けるための準備を後回しにしても最初は困りません。困るのはしばらく経ってからです。
NSYにご相談いただく場合もまず今のアプリの置き方と戻し方を確かめます。そのうえで使う人を広げる順番と次へ進む条件を一緒に決めていきます。



