探せることと答えられることは違う
AIが社内の資料を検索できるようになると必要な情報はそろったように見えます。ですが資料が見つかることと自社に合う答えを出せることは別です。
例えば「この見積もりは値引きしてよいか」と聞かれたとき、AIは過去の見積書や料金表を探せます。しかしどの取引先なら値引きを認めるか、担当者がどこまで決めてよいかは多くの会社で資料に書かれていません。ベテランの頭の中にある基準です。基準を知らないAIは一般的な考え方で答えるので、答えが自社の判断とずれます。
AIに足りないのは事実より判断の基準
社内の資料の多くは見積書・議事録・手順書のような「何が起きたか」の記録です。AIが自社に合った答えを出すには次のような情報も要ります。
- 社内の言葉の意味(「大口」「急ぎ」が何を指すか)
- 何を優先するか(価格・納期・品質のどれを先に守るか)
- 誰が決めてよいか(担当者・上長・社長の範囲)
- 例外とその理由(なぜそのときは特別に認めたか)
これらは書かれていないことが多く、資料を増やしても埋まりません。NSYではAIに渡す情報を「事実」と「判断の基準」に分けて整えることをおすすめしています。
1つの業務から書き出す
全社の資料を一度に整えようとすると終わりません。まず1つの業務を選びます。見積もりの作成や問い合わせへの返答のように繰り返し発生し、人によって答えが分かれやすい業務が向いています。
その業務で担当者が何を見てどの基準で判断し、誰の確認を経て決めているかを聞き取って文章にします。過去に例外を認めた件があればその理由も残します。聞き取った内容の整理はAIに手伝わせることもできます。あいまいな点を決めて基準として認めるのは人の仕事です。書き出してみると人によって基準が違っていたとわかることもあります。そのずれを社内で決め直すこともAIの答えを良くする作業の一部です。
仕事の記録がたまる場所に置く
書き出した基準は社員がふだん使っている場所に置きます。文書を共有しているサービスや社内のチャットなど、仕事の記録が自然にたまる場所です。AIの道具を選ぶときも性能の比較よりその場所とつながるかどうかを重視します。
基準は一度書いて終わりではありません。前提が変わったときや新しい例外を認めたときは書き直します。AIの答えがずれていたら、どの基準が足りなかったかを確かめて書き足します。この流れを決めておくと答えは使うほど自社に合っていきます。
基準がない問いには答えさせない
基準がない問いにはもっともらしく答えず「判断の材料がありません」と返すようにしておくことも大切です。もっともらしい答えは誤りに気づきにくく、そのまま社外に出てしまうおそれがあります。答えないことを不具合ではなく決めておいた動きとして扱います。答えられる範囲が決まれば人が引き取る場面もはっきりします。
NSYにご相談いただく場合もまず対象の業務を1つ選び、判断の基準を一緒に書き出すところから始めます。



